■名探偵モンク エピソードガイド
名探偵モンク 狙われた市長候補
狙われた市長候補 Mr. Monk and the Candidate
脚本:アンディ・ブレックマン
監督:ディーン・パリソット

あらすじ
 エイドリアン・モンクはかつて、数々の難事件を解決しサンフランシスコ警察(SFPD)の伝説とまで呼ばれた名刑事だったが、愛する妻が何者かによって車に爆弾を仕掛けられ殺されるという事件をきっかけに、生来の強迫神経症(OCD)傾向が悪化。現在は警察を休職中で、看護婦のシャローナ・フレミングをアシスタントに、犯罪コンサルタントをやっている。

 ニコル・バスケスという若い女性が殺害された事件に関わることになったモンクは、OCDゆえにありとあらゆる細部に気づき、気になってしまうという自らの傾向を逆手にとって、事件現場から、他の人々が気づかなかったさまざまな有力な手がかりを見つけ出していく。

 一方、次期市長候補のセントクレア氏が街頭演説中に狙撃され、彼のボディガードが死ぬという事件が起こり、事態を重くみた市長は、事件を担当しているサンフランシスコ警察殺人課のリーランド・ストットルマイヤー警部に、エイドリアン・モンクを捜査に加えるよう命令する。ストットルマイヤー警部はモンクの元上司で、3年半前にモンクから警察バッジを取り上げた張本人だった。

 ストットルマイヤー警部は嫌々ながらもモンクの捜査への参加を認め、セントクレア氏とその妻ミランダ、そして選挙参謀のギャメルとの会合に彼を伴い、犯人が狙撃した現場に連れて行く。その現場を見たモンクは、一見何の繋がりもないように思えるニコル・バスケス殺しとこの事件の犯人は、同一人物だと確信する―――


このエピソードの《警部ファン的》みどころ
 「名探偵モンク」シリーズのプロデューサーで、ライターでもあるアンディ・ブレックマンは、名探偵モンクシリーズを構想するにあたり、シャーロック・ホームズから多くのアイデアを得たと認めているが、その言葉どおりこのエピソードでの警部は、ホームズに出てくるスコットランド警察のレストレイド警部そのままの、傲慢で、頭が固く、俗物的で、名探偵の才能に嫉妬している男である。

 もちろん、このキャラクター設定はシリーズを通してずっと生きていて、ストットルマイヤー警部は今でも上記のとおりの性格の持ち主だが、彼にはそんな欠点を上回る美点が数多くあることが、シリーズの回を追うごとにわかってくる仕組みになっている。だがこのエピソードの中でも、時折、ストットルマイヤー警部は、ただの意地悪で愚かな元上司というだけのキャラクターではない一面を覗かせる。

イカレ探偵が来ましたよ

 モンク達の到着を建物のロビーで待っている時、車からモンクとシャローナが降りてくるのを見たディーコン(後のディッシャー)が"Here comes, Defective-Detective"(イカレ探偵が来ましたよ)と呟いた後の、その言葉に同意したいのかそれとも否定したいのか、自分でもよくわからないといった感じのたいへん複雑な表情で、ディーコンをちらりと横目で見る警部。警部とモンクの愛憎半ばする関係を、小さな視線の動きだけで表現していてすばらしい。

モンクには見えるものが俺には見えない

 ニコル・バスケス殺しと市長候補暗殺狙撃事件には、モンクの推理どおり繋がりがあったと判明し、警部が"How does he do it, I mean, I have two eyes, I see everything that he see, but I...I don't see what he see."(あいつはどうしてこんなことができるんだ。つまり、俺にだってあいつと同じふたつの目があって、あいつと同じものをみてるのに、でも、あいつに見えるものが俺には見えない)と嘆くシーンでは、モンクの才能に嫉妬しつつもそれを高く評価している警部の本音が見える。

モンクの陰に生きる

 そしてそんな警部の思いは、ラスト近く、下水道から出てきたモンクにたくさんのカメラやレポーター達が群がる中、彼の功績を称えるため近寄ってきた市長候補が、さりげなく警部だけをスポットライトから押しのけた瞬間の、悔しさに満ち満ちてはいるが、納得してその仕打ちを黙って受け入れる警部の表情にも表れているのだった。


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