■名探偵モンク関連コラム
2006/02/03
吹き替えに関する雑記

 この文章を読んでくださっている方の大多数は、名探偵モンクを少なくとも一度は観たことがある方ばかりだと思うが、その際、皆さんは、吹き替えでご覧になったのだろうか。それとも字幕でご覧になったのだろうか。

 私の場合は、テレビではなくレンタルビデオ屋で借りた字幕版のビデオで、初めてモンクを見た。つまり最初からモンクの声はトニー・シャルーブの声であり、警部の声はテッド・レヴィンの声として聞いた。

 シーズン1のビデオを全て字幕版で見て、すっかり名探偵モンク、特にストットルマイヤー警部の大ファンになった私は、吹き替え版では警部の声はどんななのか気になって、もう一度、今度は吹き替え版のビデオを借りてきた。そして初めて警部役の坂部文昭さんの声を聞いた時・・・正直、かなりの違和感を感じたのを覚えている。

 決して坂部文昭さんが悪いのではなく、最初からこの声が警部の声なんだと認識していれば、きっと問題なかったのだと思う。
 逆に、もし吹き替え版を先に観て、坂部文昭さんの声に慣れた後で、テッド・レヴィンの声を聞いていたら、やっぱり違和感をおぼえたかもしれない。ちょうど、小池朝雄さんの声のイメージが強すぎて、ピーター・フォークの声で聞くとかえって違和感を感じる、コロンボ警部のように。

 しかし、すっかりテッド・レヴィンの声に慣れた私の耳には、坂部さんの声は、よく言えば円熟しすぎ、率直に言えば、ちょっとオッサンすぎるように聞こえた。テッド・レヴィンはハゲているので老けてみえるが、まだ50歳前。よって警部の年もそれくらいとして考えると、坂部さんの声は渋すぎて、とても40代の男の声には聞こえない。実際のところ、おいくつなんだろうと思って調べてみたら、ちょうどテッド・レヴィンよりひとまわり年上だった。さもありなん。

 しかし、つまるところ私はテッド・レヴィンのファンで、特に彼の声に惚れこんでしまっているので、誰が吹き替えをやっても、きっとピンとこないに違いない。実際、アメリカで出ているモンクのDVDには、フランス語とスペイン語の吹き替えが収録されているが(SEASON 1のみ)、私にはやっぱりテッドの声が一番だ。

 とはいえ、吹き替え版というのはやはりとても興味深いもので、今では、私はそれを見るのがけっこう好きになった。
 姿かたちはおなじでも、吹き替える声優さんの声の質、喋り方、笑い方、怒鳴り方、息つぎのタイミングひとつでもキャラクターの印象が変わり、ドラマ自体の雰囲気もまた違ってくるから、面白い。

 英語版の警部に対する私のキャラクター観をひとつの基準にすると、フランス語版の警部(エリック・コラン)は、やはりちょっと老け気味で、シリアスで、より皮肉っぽいような感じがする。ついでに言うと、フランス語版のモンクの声は、とても低音で落ち着いた感じの声の声優さんがやっていて、トニー・シャルーブの声とはだいぶ印象が違う。

 スペイン語版の警部(アルマンド・レンデス)は、私個人の意見では、最も英語版の警部に近いように感じる。良くも悪くもあまりくせがない。スペイン語版は、他のどの声優さんもオリジナルとけっこう声が似ていて、特にシャローナは、声の質自体はちょっと違うけれど、すごくビティ・シュラムの喋り方の感じが出ている。

 日本語版(WOWWOW版は観ていないので、ここではNHK製作の吹替版について語る)の警部(坂部文昭)は、先述した通りかなりオッサンぽくて、また英語版の警部よりも、叩き上げの警察官らしい良い意味でのガサツが強調されているような印象を受ける。

 その他の言語で、まだ聞いたことがないけれどぜひ聞いてみたいのがドイツ語版の警部(ヘルムート・ガウス)だ。この声優さんは警部役のほかに、私の大好きな俳優であるリーアム・ニーソンのドイツ語の吹き替えをしているらしい。テッド・レヴィンとリーアム・ニーソンという、声の良さでは定評のある俳優達の吹き替えをやっているのだから、かなり良い声なのに違いない。06/02/04 追記ヘルムート・ガウスの公式サイトで彼の声を聞くことができた。思ったよりトーンの高い、若々しい声だった。ちょっと意外。でも悪くない。

 イタリア語版の警部(エンニオ・コルトルティ)もまだ観たことはないが、声だけなら、声優さんの公式サイトで聞くことが出来る。この人もけっこう渋くていい声だ。この声でイタリア語で喋る警部は、かなりセクシーかもしれない。

 以上は、全くの私の個人的な印象に過ぎないけれど、こんな風に吹き替え版には吹き替え版の面白さがあって、それは海外のドラマや映画を観る際の、ひとつの大きな楽しみにもなっている。

 逆にもし、NHKの吹き替え版しか観たことがないと言う方がいたら、ぜひ一度はオリジナルの声で観て欲しい。声が違うだけでも、キャラクター観はびっくりするほど変わる。オリジナルの声で観たら、たぶん皆さんの中のストットルマイヤー警部像は、12歳ほど若がえるはずだ(笑)。

 しかし実際には、字幕版と吹き替え版を見比べるには、字幕版と吹き替え版両方ともビデオ屋で借りてくるしか、今のところ方法がない。吹き替えと字幕が両方収録されたDVDが出てくれればいいのだが。そもそも、モンクのように本当に面白いドラマをいまだにDVDしていないなんて、絶対におかしい。もったいなさすぎる。

 そう思ってる人は私だけではなく、調べてみたらこちらのページでモンクのDVD化を求める一種の署名運動のような活動が行われていたので、私も早速、署名してきた。

 4月からまたNHK-BSで新シリーズの放映が始まる。
 これを機にまたファンが増え、DVD化に向けて何か動きがあるといいな、と切に願っている。

文責:Lui

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