■警部のブログ 翻訳
 以下の文章は、USA NETWORKの公式サイトに掲載されているブログの、警部のブログをLuiが日本語に翻訳したものです。原文の著作権はUSA NETWORKにあります。公式サイトのブログには警部の他に、ナタリーやクローガー先生のもあります。それぞれとっても面白いので、ぜひ読んでみて下さい!
MAR. 10, 2006
物置の中の思い出

 週末は雨だった。俺は、憂鬱な天気と退屈に囲まれて、室内に閉じ込められていた。ひどく暗い気分だった。
殺人事件が起こって呼び出しが来ないかと期待したが、誰も電話をかけては来なかった。ついに俺はカウチから起き上がって、ずっとやりたかったことをやろうと決めた。

 家を出た時、俺は多くの私物を残してきた。この週末、カレンは息子達を連れて街を出ていると知っていたので、家に寄っていろいろなものを取ってくるいい機会だった。

 始めはさっさと用事を済ませて出てくるつもりだったが、クロゼットには、俺が予想していたよりもはるかに多くのガラクタが詰め込まれていた。俺は、10年間ほったらかしにしてきたが今こそ、ここを整理する時だと考えた。

 俺は、昔の年次報告書や、結婚式の写真や、大学の卒業写真や、バースデイ・カードや、読もうと思って取っておいてついに読まなかった本や雑誌、息子達の昔の宿題、レポートなどをひっくり返した。

 俺は居間に3つの山を作った。ひとつはちゃんと見るべき山。もうひとつはできれば見たほうがいい山。最後は、ほとんどがカレンの物なので、見る必要はない山。

 クロゼットをひっくり返しているうちに、何本かのワインの瓶も見つけた。特別な時に飲もうと取っておいて、それきりになっていたものだ。カレンは酒飲みではないから、このワインを惜しむということもないだろう。

 今こそ特別な時だと思ったので、俺はワインの栓を抜いた。

 その日の終わりに、俺はカレンの山にも目を通した。最初は無視しようと思っていたのに、気が付いたら、彼女が切り抜いた記事を読んでいたのだ。彼女は、ウーマンリブだの心理学だのといった代物と一緒に、男女関係に関する数多くの記事をとっていた。

 いつもならその手のものには興味ないが、それらの記事を読んで俺は、俺達の結婚生活のなにがいけなかったのか、考えこんでしまった。それらの中に答えがあり、読みさえすれば解決方法がわかるような気がした。

 そこで俺は2本目のワインをあけ、腰をおろして、それらの記事を次から次と読んだ。まるで、カレンが同じ部屋にいて、彼女の声が聞こえるようだった。

 読み終わると、俺はこれまで以上に混乱していた。カレンが恋しくて、思ってもみないほどに感情が高ぶった。ワインは何の役にも立たなかった。

 その夜、自分の部屋に帰るのはいい考えだとは思えなかったので、俺はカウチで眠った、結婚生活の間、何度もそこで眠った場所で。

 翌朝、俺はカレンの私物には目もくれず、自分の物にだけに集中した。もちろん、ワインは抜きで。

 殺人事件が、この作業をつづける邪魔をしてくれないかと願ったが、やはり電話はならなかった。

 何時間もつまらないガラクタと格闘した後で、俺は懐かしい物に出くわした。若き日の思い出の品だ。昔、身に付けていた古い皮のフリンジつきのジャケットと、ビーズがついたヘッドバンド。俺はかつては、ヘンな格好をした反抗者だったのだ。今となっては、これが自分の物だったことすら信じられないが。

 もちろん、警察官になってからは、皮のジャケットとヘッドバンドは卒業した。

 たくさんの古いレコードやポスターも見つけた。かつて行ったコンサートで買ったものだ。クリーム、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング、ヴァン・モリスン、ジェファーソン・エアプレイン。音楽は、驚くほど鮮やかに当時の記憶をよみがえらせてくれる。

 クロゼット片付けている間、そのレコードの中のひとつをかけてみた。やがて俺は、一番の思い出の品を見つけた。古ぼけたシルバートーンのアコースティックギターだ。それは少しさび付いていたが、その日の残りの時間、俺はずっと、いくつかの古い名曲を、もう一度練習することに費やした。

 手の中のギターの感触は素晴らしかった。お互いに繋がりあっている感じだった。少なくともひとつは俺にも、うまく築けた関係があるということだ。

翻訳:Lui

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