■警部のブログ 翻訳
以下の文章は、USA NETWORKの公式サイトに掲載されているブログの、警部のブログをLuiが日本語に翻訳したものです。原文の著作権はUSA NETWORKにあります。公式サイトのブログには警部の他に、ナタリーやクローガー先生のもあります。それぞれとっても面白いので、ぜひ読んでみて下さい! |
JAN. 20, 2006 ディナーパーティ 俺のような仕事についていると、時に、非常に不愉快な思いをする羽目に陥る時がある。 もちろん、暴漢や殺人犯を檻の中にぶち込むことは、俺にこの上ない充実感を与えてくれる。しかし、俺が日々どんな目にあっているか、あんたらにはわかりっこない。なんなら、その辺を少し話してみよう。 俺のような立場にいる男は、時にはリラックスして、楽しむってことが必要だ。ほんの少しの間でも、仕事を忘れて。 妻はいつも、瞑想だのヨーガだのといった、ニューエイジっぽいあほくさいことをやれと俺に言いつづけているが、俺自身はもっと、伝統に則ったやり方の方を好んでいる。つまり、バーで強いのを一杯、もしくは何杯かのビールを、男友達と汲み交わすといった趣向だ。 俺は自分のことを、状況さえ許せば、うんと楽しむ方法をちゃんと心得ている男だと思っている。そして、カレンと結婚して学んだことがひとつあるとすればそれは、状況が許す時、それは必ずしも、常に妻が横にいるときではないということだ。 誤解しないでほしい。俺は妻を愛している。だが我々は、あまりしばしば社会的な集まりに一緒に顔を出すのは、賢明ではないとすでに学んでいる。そして信じてほしいんだが、それにはれっきとした理由がある。 カレンと俺は、さまざまなことに対して、違う意見をもっている。俺は殺人課の刑事で、彼女は銃や暴力を信じていない。彼女はいつも抗議活動やらなんやらに励んでいるタイプの人間だが、たいていの警察官は、そういった群集の中に入ってもなじめないだろう。 だから、俺達は一緒にパーティに行っても、結局は別々に行動する。彼女は一人で、彼女の言うところの『活動家』の皆様のところへ、俺は俺で、警官達ばかりが集まっているところへ。 一度、彼女を、署で開かれたホリデー・パーティに連れて行ったことがある。ここで仕事に就いたばかりの頃だ。あれは、俺が決して二度とはやらない、大きな過ちだった。今に至るまでカレンは、警察官というものはみんな、酔っ払いで、『性的妄想』にとりつかれていて、『ナポレオン的傾向』の持ち主だと言いつづけている。 彼女が黙るのは、俺が女性の警察官か、エイドリアン・モンクのことを持ち出した時だけだ。そうなるとさすがのカレンも、警官の中にも彼女のつまらんステレオタイプに当てはまらない人間もいることを、認めざるをえない。 とはいえ、一緒に出かけるパーティもある。それはたいてい友達か、または我々の仕事や政治観に関係しない人々が開くパーティだ。 地元のアニマル・シェルターの賛同者の一人から、資金集めのためのパーティに招待された時は、これは大丈夫だろうと考えた。カレンは動物好きだし、俺のほうも別に、動物達に特別な害意は持っていない。そこで我々は一緒に出かけることにした。もちろんいつもどおり、買い物の話はしない。政治の話はしない。酒は飲まない。というお約束の下で。 しかし、信じられないことに、我々が到着して10分もたたないうちに、誰かが俺に気づいて、みんなに俺が警官だと言いふらしやがった。 俺は自分の仕事に誇りを持っているが、パーティにいる人々全てに警官であることを知られてしまった時点で、楽しい時間は終了だ。同じことが起こるたびに、俺はその場にブースを設置して、質問ごとに1ドル請求しようかと考える。彼らがみんな列を作って、俺に質問にくるのを知っているからだ。 それもいつも同じ質問ばかり。 「違反チケット切られたんだけど、絶対に私はなにもしていないんだよ。どうやったら取り消してもらえる?」 「飲酒運転で捕まったけど、僕はビールたった6缶飲んだだけだったんだ」 「アルコールやマリファナより体に悪いドラッグって何?」 「撃たれるってどんな感じ?」 「死刑には賛成ですか?」 「何人くらい、無実の人が殺されているの?」 この手の質問を、繰り返し繰り返し。 しかもこの日に限っては、いつもよりもっと状況は悪かった。このささやかで陽気なパーティの主催者側の一人の女性が、俺が、かつて彼女の可愛いマフィーのことで、彼女に法令違反書類を書いた警察官だと、たまたま思い出してしまったのだ。 俺のように、同じ街で長く警察官をやっていると、たくさんの人々に出会う。そしてたまたまストットルマイヤーなんて名前をもっていると、たいていの人に覚えられている。 このベティさんは、俺の短くはないキャリアの中で、犬にリードをつけていなかったかどで俺から法令違反書類を受け取った、たったひとりの人物だった。25年も前のことだ。それなのに、彼女は俺のことを思い出しやがった。 彼女はそこにいる人々の半分に、かつてピア39で、いかに俺が彼女と彼女の可愛い犬のマフィーに恥をかかせたかを吹聴し始めた。だが、真実はこうだ。マフィーは小汚い犬で、埠頭を走り回っては、回転木馬から降りようとする子どもたちみんなをおびえさせていた。俺は、その雑種犬を閉じ込めろなんて言いはしなかった。ただ、こんな犬にはリードをつけるべきだし、法律にも、そうはっきりと明記してあると言っただけだ。 もちろんベティはそういう風には受け取らなかったし、見たところ彼女は、いまだに俺に対して、少しばかり恨みを抱いているようだった。 俺は目立たないようにしていたのに、ベティは、その場にいた全員に俺が誰で何をしたかを言いふらして歩き、俺はすっかり、動物嫌いの悪者に仕立て上げられてしまった。 それでも俺は、お約束に従った上で、楽しい時間を過ごすつもりだった。あるカップルが近づいてきて、俺に、警察に介入してほしい問題があると言い出すまでは。 俺はてっきり、彼らは、娘のタチの悪いボーイフレンドかなにかに天罰を与えてやって欲しいとでもいい出すのかと思った。 しかしふたを開けてみると、彼らの願いは、あるイングリッシュ・シープドッグの監視だった。夜の夜中に駆けずり回って、隣近所の犬達に嫌がらせをする犬どもを追いかけ回せと言うのだ。俺が動物嫌いだと聞いて、ぴったりの仕事だと思ったのに違いない。 俺はつとめて冷静に、礼儀正しく、自分は現在、サンフランシスコ警察の殺人課を指揮しており、この地位に就いて以来ずっと、殺人者や凶悪な犯罪者を追いかけることに手一杯で、動物に関する条例違反に割く時間はないとご説明申し上げたが、たぶん彼らは、俺の頭から湯気が出ているのを見てしまっただろう。 彼らはこちらの気持ちを察して立ち去ったが、運が悪いことにカレンがそれを聞いていて、一撃必殺のまなざしで、こちらを睨んでいた。彼女は俺を「ものすごく共和党員的」と呼んで、その夜の間中ずっと、冷ややかな態度だった。 こうなったら、アルコールなし。なんてやってられるか。そして、その後に持ち上がった出来事を手短にまとめると、俺は結局、長椅子で寝る羽目になった。 まったく、パーティってやつは。 翻訳:Lui |