■2006年2月、テッド・レヴィンインタビュー
下記のインタビューはこちらのサイトに掲載されている記事を日本語に翻訳したものです。 原文の著作権はTV NOWのトニー・ブレイ氏にあります。 |
シリアスな映画に出演しているにもかかわらず、コメディドラマにも出る勇気を持つ俳優は、そう多くはない。しかしテッド・レヴィンは挑戦の達人だ。 テッドは私に、偉大な俳優であった故ジョージ・C・スコットを思い起こさせる。1963年にスコットは、CBSが制作した、当時最も重要な作品だった素晴らしいドラマ"East Side/West Side"に出演した。スコット演じるソーシャルワーカーのニール・ブロックは、レイプやドラッグ、幼児虐待、貧困などの問題に取組んだが、この内容は当時としては時代を先取りしすぎていて、ナーバスになったTV局の重役たちはシリーズを途中で打ち切った。 レヴィンも、2000年にABCで"Wonderland"に主演したが、スコットの時と同様に、その内容があまりにも率直で生々しかったがゆえに、TV局のトップ達に受け入れられなかった。ピーター・バーグ制作による"Wonderland"は、ニューヨークのリヴァーヴュー病院を舞台に、精神病院の厳しく現実的な日常生活を描いたドラマで、レヴィンは、精神科のトップ、ロバート・バンガー博士を好演していた。なぜ、たった2エピソードを放映しただけの時点で、精神医学界が局に打ち切りを要請したのか、私には全く分からない。アメリカは、精神病に苦しむ患者が、日々どのような問題に直面しているのか知る機会を与えられたにもかかわらず、ABCが放映を打ち切ってしまったので、それをみすみす逃してしまった。 幸いなことに「羊たちの沈黙」「ヒート」「クライシス・オブ・アメリカ」「SAYURI」など映画界における素晴らしいキャリアをすでに持っているにもかかわらず、レヴィンは、ドラマ出演に対する情熱も失ってはいない。彼は「羊たちの沈黙」のバッフォロー・ビル役でアカデミー助演男優賞を受けるべきだったと、私は信じている。レヴィンとアンソニー・ホプキンスの怖ろしい演技のおかげで、あの映画は犯罪映画ではなく、ホラー映画と呼ばれているのだ。 レヴィンは、放映中のTVシリーズの中で最も面白いドラマ「名探偵モンク」にストットルマイヤー警部役で出演している。USAネットワークは、エイドリアン・モンク(トニー。シャルーブ)が、美しいアシスタント、ナタリー・ティーガー(トレイラー・ハワード)と共に、普通の人々が気づかないような手がかりを見つけ出す彼独特の能力で事件を解決する恩恵を、毎週享受している。もちろん、モンクは普通ではない。その点こそ、このドラマが他のミステリードラマと違うところだ。彼は、普通の地球人が十人束になっても足りないくらいの、数多くの恐怖症と奇妙なこだわりを持っている。 レヴィンは、モンクを母鳥のようにサポートすると同時に、犯罪者を一発のパンチでノックアウトもできる警部という役を、彼の俳優としての幅広さをもって、巧みに演じている。時には、妻に文句を言うという間違いを犯したりもして。 金曜日(3月3日)10時に、USAネットワークで"Mr. Monk and the Astronaut"が放映される。宇宙飛行士が宇宙にいる間に、何らかの方法で彼の妻を殺した事件を、ヘンな探偵が捜査するという話だ。見逃さないように。 トニー・ブレイによる、テッド・レヴィンインタビュー あなたは、過去10年間でもっとも興味深いドラマ、「名探偵モンク」と"Wonderland"の両方に出演されていますね そういってもらえるとうれしいよ、ありがとう。"Wonderland"は素晴らしい人々と脚本に恵まれたドラマだったから、今でも、とても残念に思っているんだ。60年代にジョージ・C・スコットがやった"East Side/West Side"と同じくらい重要な作品になったはずだ。精神病治療における問題点を浮き彫りにしてね。 あの時、息子さんが精神分裂病にかかっているという男性から、たくさんの手紙をもらった。最初、彼は非常に怒っていたが、次第にそうでもなくなっていった。息子と話し合った結果、彼は、あのドラマが作られたのは本当にいいことだと言っていた。彼にとっては、本当のカタルシスだったようだ。この仕事についていると、しばしば自分は無力でなんの役にも立たないと感じるけれど、逆に、誰かに影響を与えることが出来たと感じることはめったにない。しかしあのドラマは、少なくとも2人の人間に、なんらかのものを与えることが出来たんだ。あのドラマの放映が打ち切られた理由は、言ってみれば税金控除のようなものだと思っている。打ち切りの本当の理由は、決して明らかにはされないのさ。僕らは8回分のエピソードを収録したが、放映されたのはひとつかふたつだ。ピーター・バーグがもう一度やったら、今なら、成功するんじゃないかな。当時は、最初の部分だけで打ち切られてしまったけど、今は、この社会も少しは大人になっていると思うし。 あなたはモンクの収録中にも、あっちの現場こっちの現場と飛び回っていますね。 仕事が好きなんだ。 そうでしょうね。あなたは僕が知る限り、誰よりも数多くの映画やドラマに出演なさっています。あなたは「羊たちの沈黙」や「ヒート」などシリアスな映画に出演していますが、なぜストットルマイヤー警部のようなコミカルな役をも引き受けたのですか? 脚本が良かったからね。映画出演では、家族と長い期間離れ離れになって生活しなくてはいけないので、自分の良心に従ってテレビの仕事のほうを選んでいるんだ。家族とはなれるのは辛いから、テレビの仕事を中心にしている。 僕が役者になった大きな理由の一つは、子どもの頃ローレル&ハーディを観たためだ。優れたコメディは不滅だ。チャップリンの影響も受けている。マックス・ソネットのコメディーの、ベン・ターピンからの影響も非常に大きい。ストットルマイヤーは、トニー・シャルーブのチャップリンにイライラさせられる、口ひげを生やしたお役人なんだ。 あなたとトニーのコンビは素晴らしいと思います。モンクでのあなたは、他の役でのそれと非常に違いますね。僕は、最もドラマティックなパフォーマンスとして、"Being There"でのピーター・セラーズ、"Network"でのピーター・フィンチ、そして、"羊たちの沈黙"でのあなたを挙げているのですが。 ありがとう。光栄だよ。あの役を演じるのは簡単ではなかった。ずいぶん時間をかけて準備したんだ。原作は素晴らしい本で、そこから数多くのヒントを得ることが出来た。I あなたのお子さんは、あの映画を観られる年になっていますか? あの仕事をやったとき、娘は12歳だった。僕は彼女に原作本を与えて、読むように言ったんだ。あらかじめ慣れてもらうためにね。彼女は大丈夫だった。映画が公開されたとき、息子は4歳だった。彼はあの映画を観てはいないと思うけれど、友達から話は聞いたようだ。 モンク自体が終わってしまうまで、あなたとトニーが辞めるとは僕には考えられないのですが、終わってしまった後も、コメディの仕事は続けるつもりですか? コメディを演じるのは大好きだ。本当の挑戦だからね。俳優にできる最も素晴らしいことは、人々を笑わせることさ。 あなたは絶妙の間の感覚をもっていますが、あれは舞台での経験から学んだものですか? 部分的には。それに、ローレル&ハーディ、チャップリン、マルクス兄弟などのコメディの名作からも学んだ。コメディは簡単ではないけれど、それに打ち込んでみると、とても面白いものだ。「名探偵モンク」はその大部分をトニーの才能に負っている。彼は素晴らしいよ。ストットルマイヤー役における最大のチャレンジは、シンプルでありつづけることだ。素直に反応できる状態に自分を置いておくんだ。無理をしようとしてもうまくいかないからね。 観た限りでは、あなたが無理をしているなんて、想像も出来ませんよ。モンクは第6シーズンまで作られることが決まったそうですが、モンクと映画の仕事を両立して、セリフが混ざってしまったりすることはないんですか? 事件現場でジェイソン・グレイ・スタンフォード(ランディ・ディッシャー役)に命令を出すシーンで、「警官達に周辺の聞き取りをさせるよう、ジム・ペンブリーに言ってこい」と言ったことがある。元ネタは羊たちの沈黙なんだけどね。そう脚本に書いてあったわけじゃないんだけど、ふっとペンブリー巡査の名前が頭に浮かんだんだ。ジェイソンは驚異的な記憶力の持ち主なので、どこからその名前が出たのかすぐにわかったらしい。ジェイソンは、些細なことまでよく覚えているんだ。スポーツや俳優に関して、あれをしたのは誰だったかとか、いつだったかとかいうことがわからなくなった時も、彼に聞けば一発さ。僕としては、ペンブリーという警官の名前は、ごく自然に口からついてでたものだった。 ストットルマイヤーがあなたの代表的な役と言われても、あなたの評判が損なわれることはないでしょうね。モンクは素晴らしいTV番組です。僕の大好きな"Boston Legal"や"Da Vinci's Inquest"のように。 "Da Vinci's Inquest"に出演していた俳優と、モンクで共演したこともあるよ。トロントで撮影した時だ。 新作映画のご予定は? "The Hills Have Eyes."というホラー映画がまもなく公開予定だ。ウェス・クレイヴンが70年代に作り、カルト的人気を博した作品のリメイクだ。アーロン・スタンフォード、キャスリーン・クインラン、ヴァネッサ・ショー、エミリー・デ・ラヴィンも出演している。 ご成功をお祈りしています。モンクは、いまさら祈る必要はありませんね。すでにあらゆる意味で大成功していますから。今日は時間を取っていただいて、ありがとうございました。 ありがとう。 |