■トニー・シャローブ、テッド・レヴィンを語る

 以下は、The William S. Paley Festivalでのファンとの質疑応答の際、警部役のオーディションの時の出来事をトニー・シャローブが語った部分の抜粋訳です。MONKのレギュラーが総出演したThe William S. Paley Festivalに関しては、こちらのThe William S. Paley Festival"MONK"にその時の様子が詳しく紹介されています。
 テッドはたちまち僕のヒーローになったんだ。この話をしてしまっていいのかどうかよくわからないが・・・ここだけの話ってことで、とにかくテッドは、たちまち僕のヒーローになった。彼に会ったことはなかったけれど、僕は彼の仕事の大ファンだった。それで僕は、それまでお互いに会ったことはなかったんだけれども、彼には予備的なオーディションは必要ない、と言ったんだ。で、直接、局に来てもらった。その時が初対面で、読みあわせをしたのも初めてだ。
 局でのオーディションというのはとても大変なんだ。ビティや、他のみんなもよく知ってることだけれど、ぴりぴりとした緊張感が張りつめている雰囲気でね。僕自身も、たくさんの局でのオーディションを経験している俳優の一人だけど、この時に限っては僕がモンク役をやることはすでに決定していたので、ただ彼らと読みあわせをして、俳優達が一次オーディションでは見せなかった奇妙な行動を、興味深く観ていればよかった。彼らは自分自身を深く掘り下げ、自我を破壊するんだ。あれだけ多くの人がいて、緊張感がはりつめた雰囲気の中でオーディションを受けるというのは、本当の試練だよ。
 あの日、テッドはやってきて、台本を手に取った。彼は少し、不安げに見えた。彼は椅子に座って、僕達が彼の準備が出来るまで待っている間、しばらく黙っていた。やがて彼は顔を上げ、台本を読み始める前に、そこにいた局の人々やスタジオの関係者達をぐるりと見回して「てめえらなんか、くそくらえ」と言ったんだ。その瞬間、緊張は一気に解けて、部屋中が笑いに包まれた。
 しかし、興味深かったのは、僕達はみんな大笑いして、そこにいた人々のうちの何人かは、今、ここにいるけれども、その時、彼自身は笑わなかったってことだ。微笑みもしなかった。ただ僕を見て小さくうなずき、僕達は読みあわせを始めた。それが終わって立ち上がった時、僕達はお互いに「彼しかいない」って感じで見つめあった。彼は僕のヒーローになった。今までに何度も、彼にそう言おうと思ってて言えなかったけど、今やっと皆さんの前で言うことが出来たよ。

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